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FM那覇 アイ・ネット・ラジオ  2022年7月19日放送分から

イムゲー協議会の請福酒造の漢那社長 沖縄県工業技術センター豊川さん出演の1時間の動画と要約文を2つ

沖縄の中の最適な官民の役割分担2/2

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 ―― 工業技術センターのひとつひとつの研究成果が企業の業績自体も大きく左右する要素に繋がってくることも…

工業技術センターの技術開発は沖縄の製造業にとって不可欠、

【漢那】当然、製造業には技術開発は不可欠ですから。 沖縄には大きな製造業ってなかなか無いですし、自分たちだけで全てやるっていうのはちょっと無理があるんですよ。 イムゲーもはじめる際に「芋のお酒がありました」って聞いたらかといって、じゃあ僕たちでいきなり試作してできますかっていったら法律の面もあるので難しいんです。 だから工業技術センターでベースとなる技術をある程度あたりを出していただけるとスムーズに展開もできるので 沖縄にとっては不可欠な要素ですね。

沖縄の社会問題と大きく関わる技術開発

 ―― 工業技術センターの中のアンテナ、アイデア

高齢化から次世代の若者に繋げるために

【豊川】社会的な問題と大きく関わってるとおもうんです。 例えば、高齢化で豆腐屋さんがどんどん廃業して昔ながらの職人さんの技術が途絶えてしまう。 そこで、美味しい豆腐ってのは何なんだろうなってところで、 僕ら工業技術センターが豆腐屋さんに行って濃度がどうだとか温度がどうだとかっていう色んな計測をするわけです。 そのデータを新しく事業を始めたい方に伝えてあげるとかですね。 よくいうDX、デジタルトランスフォーメーションです。 勘とか度胸でやってたやつを数値で示してあげてそれに則って作れるようにする。 そういったところも一つやっているところです。

酒屋さんにしても今まで目で見て勘にに頼ってやってたものを、 温度計や色んなセンサーを使うことで 若い人でもある程度制御ができる そういったことは今から絶対必要だと思います。

 

勘からデータ、昔と異なる職員に求められるスキル

【漢那】豊川さんたちみたいな仕事をする方たちがいるので、 製造の職員に求められるレベルが昔とは違いもっと幅広い、違う技術を身につけるところに移行してるんですよ。 逆にいったら豊川さんたちがいてくれるから 別の方に行けるって部分も出てきていますね。 30〜40年くらい前まで日本のお酒作りなんて本当に勘でしたからね。 今はちゃんとデータがとれるのが当たり前で 残すのが普通になってるので、僕らはそことは違うところで やっていかないとビジネスの世界では生きていけなくなってきた。

 

 ―― 県全体の産業、様々な業種を捉えた時に その変化というものは技術的な後押しをする立場としては変化を感じてますか?

若い経営者が新しいコトにドンドン取り組んで

【豊川】そうですね、豆腐ばかりで申し訳ないですけれども、 西原の池田食品さんとか糸満の宇那志豆腐さんとか。 彼ら若い社長さんで、新しい技術も積極的に取り入れようとしているし ドンドンチャレンジしています 酒にしても、漢那さんはじめ 龍泉酒造さんといった若い方々がドンドン色んなことやってますよ。 そこは素晴らしいなって本当に思います。

僕らがついていけないくらい色んなことやってますからね本当に、すごいです。

 ―― 漢那さんこのあたりこういうものもあったらいいかなとお願いといいますか要望みたいなものが増えつつありますか?

色んな事をやり始めるから、次にやる事の目処が立ちやすい

【漢那】毎年のようにやることが増えてはいますね。 うちも昔から色んなことやってはいるんですけど、 イムゲーのように違う技術に手を出すと じゃあ次もこれできるだろうっていう目処が立ちやすい 多様性というか色んなことやり始めると変わってくるので。 僕らの世界もようやくこういう時代に来れたのかなとは思います。

 ―― 豊川さん自身お仕事通じて会社さんが色んな形で上がっていく様子を見るっていうのは楽しいもんですよね。

企業の熱意が、急にガーッと広がりをつくる

【豊川】もちろんそうです。 僕らが何かをするということではなくて、 基本的には企業さんの熱意があって、僕らがそれに引きずられるということだと思います。 こちらが、こんなにした方がいいよって言っても 会社とか作っている人がそうなの?ってことであれば、そこでポシャってしまうんです。 作り手の熱意とか意気込み夢、そういったものがあると、こっちも人間ですからつい肩入れしてしまうんですね。 そうすると凄い、最初どうなるかわからなかったものが急にガーッと、 特に物が出来たりすると周りが乗ってくるんです。 で、周りに協力者が出てきて思ってた広がりが出ることがあります。 今回のイムゲーにしても泡盛業界ではなかったですよね、 横のつながりで何かをするってことが。

イムゲー5社の動きは役割分担はありますが、結構密にやってます

【漢那】今イムゲーを5社で協力してやってる動きは 多分他の業界でもあんまりないぐらい結構密にやってますね。 お互いそれぞれの役割分担はありますけど 結構面白い動きにはなってきたのは間違いないです。工業技術センターと企業、やっぱり役割が違うんですよ。 企業だけではちょっと厳しい技術開発の基礎のところのリスクを官の部分で担ってもらって、ビジネスをやる僕たちのところは最適化の方向で形にして発展させるっていうのが仕事ですので、 役割が違いますけどそれぞれがないと形にはならない。

 ―― 元々の歴史を辿ると琉球から沖縄の変遷というもので考えて食という部分についてなんですが、他にも色んな要素があると思うんですけどどういった部分での可能性ってのを見出していらっしゃるですか?

琉球王朝時代の大交易がルーツの沖縄の加工

色んな国の色んな文化がが琉球文化に繋がって

【豊川】沖縄の色んな食品とか加工品を調べていると、 結局は琉球王朝時代の大交易に行き着くところが大きんじゃないかと。 文化、料理法、食材など中国、東南アジアとの交易を通して、日本や韓国など色んな国から色んな文化が色んな時代に入ってきて沖縄の中で マンチャー(混ざって)になってていうのが如実に見て取れるんですよ。 それが私たちのいわゆる琉球文化に繋がってるんです。

 ―― 地域に密着した様々な要素の文化、カルチャーというかそういった要素が生まれてきているところもある訳ですよね沖縄の場合

真似だけじゃ無い、自分たちのものに消化させる

 

単に技術輸入ではなく琉球のオリジナリティを加え消化展開

【豊川】今日は酒の話をしますけれども。 明治時代の新聞とか、その前の王朝時代の文献などをみると、中国南部から東南アジアにかけての醸造技術がはっきり書いてあるんですよ。 例えば麹、お酒を作る際にお米にカビを生やすんですけども、この麹の作り方も、 日本本土では「バラ麹」と言って、米粒一つ一つにカビを生やすんですけど、沖縄でやられてたのは穀物を粉にして餅みたいに固めて、それを麹にする「餅麹」の作り方が書かれて、 酒造りひとつとっても中国の影響がみれます。 「餅麹」を使った酒にしても中国と同じ酒を作るのではなくて、 沖縄の黒糖を加えて新しいオリジナルのイムゲーっていうものを作る。 そこが沖縄の文化としても、非常に素晴らしいし、 僕らもそういったところを今見習うべきじゃないかなという気がします。

【漢那】まさに、外から貪欲に情報や色んなものを仕入れて自分たちのものに消化させるっていうのが、昔も今も、これからも、いま一番うちの業界に必要なことですし、やってて楽しいんですよ。 沖縄で実際作れる物が増えつつあるなって感じています。

 ―― 地元の農作物を上手に活用し継続させてひとつの産業構造として維持させていくという考え方、今の食品加工と食品そのものというものの持つ可能性…

農業を形にするために加工品が不可欠なんです

【漢那】農業を本当に形にしようと思ったら加工品が不可欠なんですよ。 例えば、果物作ったら全く傷がなく綺麗でおいしいものがA級品なんですけど、 A級品って収穫された中の一部でB級品がどうしても出るんです。 農業として考えるとA級品もB級品も全部お金に変えないと効率が悪くて採算が合わないんですよ。 青果としていいものだけ欲しいという需要はたくさんあるんです。 だけどB級品をお金にしないと農業が成り立たない。 だから昔から加工することで保存をきかせて、色んな期間にでも食べられるようにというニーズや 味を変えて美味しいものを食べたいというニーズがあったんです。 沖縄で色々な農業やるにしても、ただなんか「果物作りました、でこれ美味しいです。」だけでは続かないんですよ。 やっぱり加工も入れて形にしていかないと持続可能な構造にはなっていかないので。

 ―― 工業技術センターでの食品加工の事例でいくと伝統食品の黒糖。それから豆乳チーズですとかそれからドライエイジングですか。

【豊川】そうですね、ドライエイジングは比較的最近の技術です。 豆腐にしても皆さんよくご存知だと思うんですけども、 沖縄の豆腐は加熱しないで豆を絞るという生絞り法。 これも中国から直接来たものなんですね。 このへんの色んな文化をドンドン煮詰めていくと新しいものがでるのかなとは思ってます。

ドライエイジングビーフというのは、元々はニューヨークあたりで高級食材として提供されてるステーキ肉なんです。 もう脂身はいいやという人とかも高齢者が多いんですけど、でも美味しい肉を食べたい。 そうすると赤身の肉を美味しくする技術ってのが出てくる。それを実現するのがドライエイジングビーフで、肉を乾燥した空気中で熟成エイジングする、そうすると非常に柔らかでジューシーで非常に味が濃い肉になるんです。 それをもう5〜6年かけて地元のエイジングカンパニーさんというところと 一緒にやってたんですけども、これもただ沖縄だから真似するっていうことではなくてですね、そこから一歩も二歩も進めて高品質なものを作ろうということで、今、読谷の星のやさんのメインダイニングで提供できるまでになってます。 ですから沖縄の小さな企業でも日本で随一のリゾートホテルのメインダイニングで使われるくらいのものが出来るというです、沖縄でもそういったことができると一つの例だと思います。

 ―― お酒の方に話が一旦戻るんですけれども。イムゲー以外にもクラフトジンなど次のスピリッツと呼ばれます様々な用途についてのご検討もあるということで…

イムゲーの次のスピリッツ、クラフトジン

【漢那】いやーもう何か作ろうと思って、わかんないことがあれば問い合わせてるのが現実なので。 やっぱり本読んで文字だけで全部調べられるわけじゃないですよ。 色んなのを積み重ねないと技術をただ本やネットだけで手に入れられるわけじゃないんですよ。 だから問い合わせしたり直接行って見せてもらったりとか、 僕もイムゲーとか色んなのやる上で色んな人の協力を持って形にもなるので。

 ―― ちょっとクラフトジンの件でこのあたりの取り組みについて少しお話したいと思うんですが

【豊川】クラフトジンはですね瑞穂酒造さんとはずいぶん前からやっています。 クラフトジンの製造で複数種類の植物(ボタニカル)から香り成分とかを抽出する重要な工程があるんですけども、 なんていっても沖縄はウコンがあったり月桃があったりですね原材料である植物(ボタニカル)資源の宝庫です。 そのへんの素材とかそれに関する成分の紐付け、 出来上がってきた酒の官能的評価など色々ご協力させていただいてます。

 ―― イムゲーとクラフトジンなども含めて将来的にスピリッツって用途といいますか色んな選択肢が増えていくじゃないですか。漢那さん的には将来の野望みたいなものはおありですか?

【豊川】まず、ジンもやってますし、ラムも今力を入れてきてます。 大麦も栽培ができているので当然ウイスキーもやりたいなとは思ってます。 沖縄でとれるものがこれだけあるんだったら、これを生かしてお酒にしてくってのは僕としては 自然なので。 他の可能性が見つけられるんだったら色んなことをやろうとは思ってますよ。 沖縄は昔から土地も狭くて、あまり作れるものが少ないと思ってたんだけど、 技術とか色んな横へ広がる展開をやってると結構新しい気づきが出てきて 「あれっ?できるんじゃない。」っていうのが出てくるんですよ。 そうするとけっこうビジネスとしても面白いですし、やってて楽しいんですよ。 色んな可能性があるし、それを飲んでもらえて美味しいといえば嬉しいですし、 それが地元産のもので作られたら、なおのこと地元にとってもプラスになるんで。

 ―― 沖縄の原産で取れるお酒の酒類をより増やしていく工程っていうのは技術的にまず応援は可能なんですか

​泡盛のバリエーション百何十種類が手元に…

​厳格なルールの泡盛の幅を広げるチャレンジ

【豊川】もちろんです。今いったウイスキー、ジン、ラム。 これらに関してはもう県内企業さんの製造や評価に協力させていただいてます。 例えば泡盛にしてもまだまだ色んな可能性あると思ってます。泡盛って実は酒税法の縛りが非常に厳しく、こういう風に作りなさいってのがかなり厳格にルール化されているんですよ。厳格なルールの中ででも、どんだけ泡盛の幅を広げられるかということで、4年ぐらい前からですかね色んな作り方、例えば麹を変えてみる酵母を変えてみる あえてウイスキーみたいに燻煙をかけてみるとかそういった酒をですね色々試作してまして、 百何十種類くらいバリーションでですね今手元に持っいます。それを泡盛酒造所さんに「こういった感じで酒作れますけど。」と今ご提供させていただいてるところです。その中で忠孝酒造さんがもう発売してるんですけども ワイン酵母を使った酒ということで今までと風味の違うもっと華やかな香りのする泡盛ってのを販売されてたりします。

 ―― ほースゴイ。なんか最強のサンプリングですね、これって。

【漢那】まー、それでもなかなか商売としては色々大変なところが多いんですけど。ただやっぱりこういうことをやってるから今後も発展していけるだろうなっていう希望もあるので。

【豊川】僕ら工業技術センターは採算っていうとこに捉われないでトライアルアンドエラー(試行錯誤)をしていけばいいかなと。民間でできないこと、採算も取れないだろうなってこと色々やって、そこで可能性ってものがあれば企業さんは多分採用していただけるんでしょう。

【漢那】正にこれが多分一番官民の役割分担としては最適ですね。

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